カラカラ帝。この皇帝自体は、たまに耳にするくらいですが、あまり良い評判は聞いたことがありません。むしろ悪いです。自身が気に入らなければ、どんな手段でも殺しにかかるのですから。
ちなみに、カラカラ帝は大浴場を造ったことでも知られていて、映画テルマエ・ロマエでもお馴染みかと思います。
そんな目まいがしそうなカラカラ帝の実態に迫っていきます。
1．生涯
188年、ガリアにてカラカラ帝は生まれます。父はセプティミウス・セウェルス。アフリカ出身者として、初のローマ皇帝になる人物です。
202年、カラカラ帝はたったの14歳で近衛隊長官の娘であるプラウティアと結婚します。この近衛隊長官は当時のローマで皇帝を凌ぐほど、権力があり、巨額の富もありました。
しかし、カラカラ帝は口うるさい近衛隊長官とプラウティアが嫌いでした。そこで、彼は勝手に「近衛隊長官が皇帝暗殺を下士官に命じる密書」を捏造したのです。この件で、勘違いされた近衛隊長官は処刑され、妻のプラウティアも追放されます。この時のカラカラ帝は、まだ16歳でした。
小うるさい近衛隊長官がいなくなると、カラカラ帝はしばらくの間、自身の思い通りに過ごしていきました。しかし、カラカラ帝の我がままがエスカレートしてくると、剣闘士を行ったり、婦女暴行まではたらいていたのです。
父のセウェルス帝が、亡くなる前、カラカラ帝の弟のゲタを共同統治者に任命します。父の死後に皇帝になったカラカラ帝は、弟に向かって自分ひとりに忠誠を誓わせます。弟と仲が悪かったからです。
彼らはお互いに暗殺を警戒し、道中でも同じに並ばないばかりか、食事も別に摂っていたほどでした。カラカラ帝は、遂に弟ゲタを亡き者にしようと画策します。そこで利用した人物が母のユリアでした。
カラカラ帝は、母に弟と仲良くしたいから、こちらに呼んでほしいと頼みこみ、母もそれを承諾します。しかし、カラカラ帝は百人隊長を忍ばせて、弟の姿が見えた瞬間に一斉に襲わせたのです。こうして弟を殺害しました。
カラカラ帝は、殺すまででは留まりませんでした。ゲタをこの世から完全に抹消するため、記憶の断罪と呼ぶダムナティオ・メモリアエというのを実行したのです。フラスコ画に描かれたゲタの顔も黒く塗りつぶさせたのです。カラカラ帝は、ゲタの関係者もことごとく処刑しました。その数は、2000人もいたといわれています。
新貨幣も導入しました。銀の含有量を減らし、貨幣を増やしたので、物価が急激に上がるインフレが起こりました。
増税による軍事力強化の必要性から、全自由民にローマ市民権を与えるアントニヌス法を制定します。こうしてローマ市民権を持つ都市を基盤とした国家ではなく、官僚的軍事国家へと移行していきました。
財政が苦しいにも関わらず、カラカラ帝は娯楽を提供することを忘れませんでした。それが、212年に始まった大浴場の建設です。名称は、皇帝の名をとってアントニウス浴場と名付けました。
弟ゲタ殺しを正当化するカラカラ帝を風刺する風刺画がアレクサンドリアで流行しているのを報復します。兵士達を率いて2万人の有力者を虐殺したのです。こうした報復を終えて、カラカラ帝はパルティア遠征に向かったのです。
パルティア遠征にともに出た近衛隊長官マクリヌスが、ある日、自分がカラカラ帝を殺すと預言者から予言され、カラカラ帝に知れると処刑されると焦ります。そこでマクリヌスは腹をくくり、カラカラ帝を殺害することに決めました。
217年、ついにその時が訪れました。マクリヌスは百人隊長を引き連れ、遠征中のカラカラ帝が排泄している時、背後から切りつけました。カラカラ帝は29歳で亡くなりました。
2．カラカラ浴場
カラカラ帝が造った大浴場はローマの南にあります。数多くある大浴場の中でも最大の規模で、216年に開場しましたが、改良工事は続きました。
大浴場は、貧富関係なく入場できる当に憩いの場となっていました。料金もかなり安かったようです。入場する前にスポーツしてわざわざ汗をかいてくる人までいたそうです。
熱気浴場、温湯浴場、冷水浴場の他、集会場や図書館などを備え、1600人を収容出来ました。当時は、色美しい大理石で覆われ、所々に彫像や噴水がありました。カラカラ帝がこれを造った目的は、兵士の休養と市民の人気取りのためでした。
